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「県南地域で唯一! 養蚕農家体験 ※虫が苦手な方は閲覧注意です」
以前に“世界で一つのmyランプシェードづくり”体験でお世話になった、繭灯り夢工房の内記(ないき)さんの養蚕を特別に体験させていただきました。※通常、体験は受け付けておりません。
日常、着物を着ていた時代はたくさんの養蚕農家が日本中にあったそうですが、現在(2022年)、全国で228戸、県内で4戸のみ、そして県南地域では唯一となってしまっており、とっても貴重な存在です。
小学生の頃に学校で蚕を飼った記憶がありましたが、うろ覚えで今回、そうだったのか!と思うことがたくさんありました。
桑を栽培して蚕を飼い、繭を生産することを養蚕業(ようさんぎょう)と呼ぶそうで、まず、蚕が繭になるまでの期間っておおよそ4週間ということ。
え~っ!!そんなに短かったかしら?あらためてびっくりです。
そして、4回も脱皮を繰り返して大きくなっていくという事。←これも記憶になかったぁ。
短期間で体長が10倍にもなるんですから、脱皮しないとはじけちゃいますよね~。
さぁいよいよ体験させていただいた約4週間をざっくりですが、ご紹介いたします。
↓↓ここからは蚕の画像が盛りだくさんですので、ご注意ください!↓↓
卵からかえったばかりの蚕はまだ1センチほどで、左の写真の桑の葉の中になんと約6万匹!いるそうです。
この小さな蚕たちが桑の葉のみを食べてすくすくと成長し、1週間後には…
あっという間に3~4センチまで成長していました。そして、3週間後には…
みるみる大きくなり、約10センチに成長しています。
生活スペースも体の大きさに合わせて広げていくので…
小屋いっぱいに。それでもかなり密な状態です。
当然、蚕は成長と共に食べる量も増えていくため、多い時は1日約250kgの桑の葉を食べるんですって!!
蚕たちの餌になる桑の葉は敷地内で自家栽培しているので、採りたて新鮮。でも、その量を毎日収穫するだけでもかなりの重労働。
収穫で一番忙しい3週目に、ほんの少しお力になれれば…と体験を兼ねてお手伝い。
昨日収穫しておいていただいた桑の葉を、朝、蚕にあげてから、桑畑へ向かいます。
まずは昨日収穫した桑の木の選定作業を体験。
桑の幹にカミキリムシが入ると木が枯れてしまうそうで、房州では幹をなるべく短く、根元だけを残した栽培方法だそうです。
次の収穫のために脇目を綺麗に選定し、次の新芽を大きく育てるそうですが、ど素人の私には、どの芽を切ってどの芽を残すのか、難しい。(汗)
見よう見まねで、丸坊主?でも、“いいよ”と優しいお言葉。
幹は足元しかないため、腰を曲げたままの作業は大変。腰が痛くなります。
夢中になって作業をしていると、あっという間にお昼になってしまいました。
午後は、いよいよ桑の葉の収穫作業です。
まずは、足元の幹から伸びた枝を根元から切って、
約30本くらいにまとめて束ねて、
保管している小屋まで運びます。
↑人が見えなくなるくらいの大きな束を運んでいます。
私は束ねる作業担当で、時期的に6月なのでまだ風が爽やかな感じで作業ができましたが、夏だったら倒れてしまいそうです。
運ぶのはもっと大変で、数束だけ運ばせていただきましたが、一束20kg?近くあり、抱えてしまうと足元が見えずに危険なので、枝の切り口側を頭の上で持ち、背負って運ぶ感じ。
かなり重くて足元がおぼつかないながらも、なんとか運びました。
運んだ桑の葉は、寝かせておくと萎れてしまうそうで、立てた状態で水をかけむしろで覆っておくそうです。
たくさん収穫しましたが、蚕はこれを1日で食べつくしてしまう…なんて話をしながら、蚕を見に行くと…
この日が一番食べる時期とは聞いていましたが、朝、緑鮮やかだった桑の葉が、ほんの数時間できれいさっぱり食べつくされて、枝と葉脈だけになっていました!
夕方、もう一度桑の葉を蚕にあげて、この日の作業は終了です。
後日。そろそろ繭になるよ~と連絡をもらい、見に行くと…
蚕の生活スペースに“まぶし”(蚕が繭をつくるボール紙でできたワク)を置いておくと、上に上がってくる習性があるそうで、気に入った穴で繭づくりを始めていました。
蚕がある程度まぶしに上がってきたら、風通しの良い状態に吊下げておくそうです。
まぶしは1枚に約150穴で、10枚1枠でセットしたものを3段、それが20連くらい。
全部の穴に入るわけではないので、まぶしのマンションがたくさん!吊下げるだけでも大変な作業です。
どこにしようかな?と、うろうろしています。
またまた後日、様子を見に行くと、
おぉ~!しっかり繭になっていました!
さてこの繭、いったい何個くらいで絹織物1反になると思いますか?
約2700頭の蚕が4900gの繭をつくり、この繭から生糸900gが得られ、絹織物1反(約700g)を織ることができるそうです。
そして、絹は衣服だけでなく様々な分野で研究中を含め製品となっているそうです。
絹糸としてはもちろんですが、繭を固めているタンパク質も化粧品や食品添加物として利用されているそうです。
一つ一つの繭をまぶしから外し、きれいな物だけ選別して出荷します。
今回、特別に養蚕体験をさせていただき、蚕を飼うために桑の栽培していることや、桑栽培の方法、蚕の成長の速さなどに驚き、そして、とても大変な仕事だと感じました。
内記さん、お忙しい中とても丁寧に優しく教えていただき、また貴重な体験を本当にありがとうございました。
鴨川で伝統的な技術を守って下さっている方がいることを嬉しく思い、また、今後も、県南地域で唯一となってしまった養蚕農家を続けてくださることを祈ります。
(photo&text YUKIE YAMANAKA)