本文
令和6年11月14日(木曜日)、千葉市若葉区にある千葉家畜市場で「第70回千葉県乳牛共進会」が行われ、市内横尾の糟谷英文さんが育てる「アクティブデール キングドック ルエラ号」が、経産牛の名誉賞(グランドチャンピオン)に輝き、農林水産大臣賞を受賞しました。
経産牛の県内1位に輝いたルエラ号を育てたカスヤファームの糟谷英文さんに、大会の感想や名誉賞に選ばれたルエラ号の特徴などをお伺いしました。
ありがとうございます。県内1位の牛に選んでいただき、とてもうれしいです。
「千葉県乳牛共進会」は、千葉県酪農農業協同組合連合会が開催する酪農家が大切に育てた乳牛の品評会のことです。乳牛の美しさを競うイベントで、乳牛の遺伝能力の改良推進や飼養管理の向上を目的として開催されています。
乳牛共進会は、月齢ごとに10部に区分され、県内10地域から選考された乳牛が出品されます。出品牛は前日に搬入され、出品者と地域生産者などが協力して出品の準備に備えます。
ルエラ号の一番優れている点は、食欲旺盛で、普段と異なる環境でも食欲が落ちないところですね。
共進会で審査されることの1つに「肋(ろく)(=肋骨)の張り」があります。餌をあまり食べないと、この張りが失われてしまいます。「肋が起きていない」という表現を使いますが、そういう状態は審査の上で不利になってしまうので、餌をたくさん食べることがルエラ号の一番誇るべきところです。
ルエラ号の母牛もたくさん食べる良い牛でしたので、良いところを親から受け継いでくれたのかなと思います。
▲ルエラ号(左)と母牛のアクティブデール ジェダイ ルエラ号(右)
評価をいただいたのは「体全体の力強さ」や「肋・乳房の構造」、「足の踏み込み」でした。
先ほどもお話しましたが、ルエラ号はたくさん餌を食べる牛なので、肋が横に大きく張って、体全体の力強さを表現することができます。
また、乳房について、「前乳房が腹壁側からスムーズに付着していて、後ろから見たときの乳房の幅や付着の高さ、乳頭のサイズ、配置、乳房の底面さ(水平の具合)がすばらしい」との評価をいただきました。さらに「歩くときの足の踏み込みがすばらしい」とも。
牛も人間と同じでガニ股で歩くものがいます。四肢の爪がまっすぐ前を向いて歩いていること、足全体で地面をしっかりと踏めていることを評価していただきました。
今回ルエラ号と1位、2位を争っていた牛は、昨年の千葉県乳牛共進会第6部でルエラ号より良い成績を収めた牛なんですよ。今回は順位が逆転してルエラ号が1位になることができました。非常にうれしかったです。
▲大会に出品された時のルエラ号
現在は、110頭の牛を飼育しています。
遺伝的な改良も研究しながら、たくさん食べる力をつけさせること、ストレスを与えないことを目指して飼育しています。
以前は、スタイリッシュな牛が高評価を得ていましたが、最近は中肉中背の牛の方が高評価を得るようになりました。しっかりした骨格を持っていないと、長くお乳を搾れないので、生産性も含めた評価に変わってきていますね。
▲牛がずらりと並んでいる牛舎
全日本ホルスタイン共進会は、5年に一度行われる大会です。前回の令和2年度大会は新型コロナウイルス感染症の影響で中止になってしまったため、久しぶりの開催です。
令和7年度大会は、大会の開催地の選定が難航したため、北海道で毎年行われる「北海道共進会」の開催に併せて行われます。そのため、通常、北海道から50頭の出品となるところ、200頭の牛が出品されることになっています。
私の牛も予選会に出品して同共進会の出場を目指しますが、北海道のレベルが高いので、都府県の出品牛がどこまで戦えるかはわからないですね。
▲全日本ホルスタイン共進会のことについて話す糟谷さん
非常に厳しい状況が続いていますね。
牛乳消費量の減少や飼料価格の高騰、後継者不足による高齢化などの問題により、廃業を選ぶ酪農家が増えている現状です。日本全体の酪農家の数も1万戸を割った、という記事も出ていました。
後継者問題に直面する酪農家も多いようです。「農家の後継ぎ」というだけで後継者が必ず就農するとは限らない時代になりました。若い世代から見て魅力ある経営にすることが大切ですが、こちらも課題の一つですね。
それでも、今回うちの牛が評価を受けたことで、鴨川や安房の酪農が少しでも盛り上がって、酪農に興味を持ってくれる助けになればうれしいですね。
▲お話をしてくれた糟谷さん
※インタビュー内容は令和6年12月9日現在です。